「緑の父」と呼ばれた男

こんにちは!系列の匠ゼミナール高針台中学校前校の南です。
めっきり涼しくなりまして、短い秋を感じる頃となりました。これからの季節は風邪が流行するので、体調管理には十分気を付けたいですね。

話は変わって、インドの北方パンジャーブ州からパキスタンへと続く国際道路、500㎞に及ぶその道沿いにユーカリの木がうっそうと生い茂る森林地帯があります。そこは元々森林伐採のために砂漠化が進み、「不毛の大地」と化した地域でした。その痩せた土地に緑を取り戻した立役者が一人の日本人であることを知っていますか?

今回のお話の主人公、名前を杉山龍丸(すぎやまたつまる)さんといいます。彼の祖父は政財界とつながりのある人物で、アジアの未来を見据えて農業技術の指導者育成を熱心に行っていました。龍丸さんはその影響で、幼い頃から祖父や父から農業の大切さを教え込まれており、祖父の代から続く杉山農園を引き継いでいました。

その龍丸さんが知人との縁でインドを訪れたのが1961年のこと、そこでパンジャーブ州の指導者から尋ねられたのが「インドを豊かにするにはどうしたらよいか」ということでした。龍丸さんは森林伐採の影響で砂漠と化した大地を見て、ユーカリの植林を提案しました。ユーカリは根を深く張り、地下の水をその根に蓄えてくれる、その上、生命力が高く成長も早いので、問題解決にピッタリの植物だったのです。

その後日本に帰国した龍丸さんでしたが、ショッキングなニュースが飛び込んできます。それはインドで大飢饉が発生したとのニュースでした。雨が降らず、乾いた大地では作物がとれず、500万人ものインド人が飢餓によって命を落としたというのです。それを聞いた龍丸さんに迷いはありませんでした。結果的には父から受け継いだ4万坪にものぼる農園の土地や自宅までも売り払って資金を作り、インドを救うために自ら植林活動に身を投じたのです。

その活動は徐々に実を結びます。ユーカリを植えた砂漠は緑の大地へと変化し、ユーカリが地下から吸い上げた水は川となって大地を潤しました。こうして、パンジャーブ州はインド最大の穀倉地帯へと変貌を遂げたのです。

この奇跡のような緑化プロジェクトを成功させたことから、杉山龍丸さんはインドで敬意を込めて「Green Father(緑の父)」と呼ばれるようになりました。

龍丸さんの「人を助けたい」というシンプルで強力な使命感が、この奇跡を生み出しました。みなさんがこのエピソードから何か感じるものを得てもらえたなら幸いです。