変化する大学入試観にどう向き合っていくべきか

みなさん、こんにちは!匠個別予備校教室長の井上です。いよいよ12月を迎え、今年もあとわずかとなってきました。師走とはよく言ったもので、年末に近づくにつれ忙しくなる保護者の方も多いのでないでしょうか。受験生はもちろん、高校生にとっても冬は力をつける大切な時期。感染症も流行る季節ですので、皆さま体調管理にお気をつけください。私も、某乳酸菌飲料を飲みながら(笑)しっかり自己管理に努めたいと思います。

 

さて、近年の大学入試をとりまく状況は、共通テストへの移行やコロナ禍による受験傾向の変動など大きな変化を経験してきました。しかし、変化の波はこれで止まることなく、むしろ、ここからさらに大きな変化を迎えようとしています。今月号は、これからの大学入試の変化について、お話していこうと思います。

 

第一に、学習指導要領改訂を受け、2025年度(来年度)入試から共通テストを含め出題科目・範囲が変わります。「情報」や出題範囲の再編成を伴う数学Cの追加、国語・数学の試験時間の増加などが挙げられます。また、これに伴い大学別・2次試験も傾向が変わると見込まれます。2021年度入試から実施も4回を数え、ようやく出題傾向・出願倍率が読めるようになってきた共通テストですが、ここにきて、また手探りの対策となってしまいます。完全にゼロからのスタートになるわけではありませんが、初出題となる科目に対する受験生や保護者の皆さんの不安は非常に大きなものです。一般入試を含めて、ふたたび大学入試が情報戦となるでしょう。

 

しかし、私がここ数年で感じている変化は、もっと本質的な「大学入試観」そのものです。THE世界大学ランキングで、東京大学・京都大学に次ぐ、国内3位の評価を得ている大学をご存知でしょうか。過去に通信でも取り上げた大学なのですが、2021年度時点で総合型選抜30%を達成した、東北大学です。近年では、THE日本大学ランキングで2年続けて国内1位、特に教育成果(卒業生の活躍に対する指標)と国際性でトップクラスの評価を得ています。世界大学ランキングでも、昨年度から100位ほど順位を上げ、国内外で高い評価を獲得しました。この東北大学が、今後、選抜方式を「全て」総合型選抜へ移行させる、という方針を発表しました。まだ、具体的な年度や内容などは明らかにされていませんが、「挑戦心のある国内外の人材を確保する」という目的のようです。

 

このような動向から窺えることはなんでしょうか。我々の経験してきた、一発勝負・学力重視の大学受験は、いずれ時代の変化とともに適応できなくなっていくだろう、ということです。推薦入試にシフトしていくことで、学力が低くても良いという話はありません。少なくとも、東北大学の総合型選抜は非常に高い評定平均と学力審査が課されますし、特に、上位国公立大学では推薦だからといって学力が軽視されることはほぼありません。むしろ、それに付け加えて、人物評価・熱意を推し量るために、学力以外の側面を評価できる総合型にシフトチェンジしたいと考えているようです。これまで、学校や塾などの教育現場、あるいはご家庭でも、自身の学生・就活時代の価値観で進路指導が行われたこともあったのではないでしょうか。本人が本当に何をしたいのか考え、深める前に、選択肢を増やすためと言いながら本人に合うかどうか分からない「良い大学」を薦めてきたこともあったかもしれません。しかし、これからは学力がいかに高くとも、目的もなく、とりあえず大学へきた学生は必要とされなくなっていくでしょう。それよりも、目的を持ち、やるべきことを考えられる学生を受け入れる準備を、大学側も進めています。

 

とはいえ中学を卒業して間もない高校1年生や2年生に、自分の将来を決めようと言っても、社会について知らない部分が多すぎて「分からない」というのが正直なところでしょう。将来について考えていくことを生徒に丸投げするのではなく、共に考え、相談する場をつくっていくことが私たちの役割だと考えています。ぜひ、ご家庭でも、時期が来たら…ではなく、お子様を一番よく知っているからこそ、早くから話し合い、様々な経験を得る機会をつくっていただけたら幸いです。